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Channel: 九州戦国ブログ~室町末期から江戸初期まで~
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大河2014_裏小説【黒田家の陰謀_2・運命の時】

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≪参照データ≫
史料(孫引き)-秋月家譜、高鍋藩史話、南藤曼綿録、
WEBサイト---武家家伝_城井氏、戦国ちょっといい話悪い話まとめ、豊前の伝承あれこれ
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このシリーズは表題にあるように歴史記事ではなく「小説」です 川* ̄д ̄*川ポッ
尺や予算と制約のある大河ドラマでは端折られた、様々な逸話と豊前に残る伝承などがベースです。
素人のチラ裏ですので、こんな話にもなるんだ~と大河の裏フィクションをお楽しみ頂ければ幸甚です^-^


数年前の新春時代劇で「二人の軍師」というドラマがあった。
軍師とは竹中半兵衛と黒田官兵衛のことだ。
時間の制約があるので、後半飛ばすのは仕方無いとして、割と健闘した方だと思う。

だが、その中で放映されなかった「黒田家の黒歴史」がある。
「民のため」と言うストーリーの設定上、割愛せざるを得なかった、黒田ファン痛恨の出来事・・・。

天才軍師・黒田官兵衛の唯一の汚点となる経歴でもあるのだが、
それは城井家に嫁いだ秋月竜子の運命に大きく関わることとなる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

「城井谷(きのいたに)を出る?!それでいずこへ参るのですか?」
竜子は思わず、夫の城井朝房(きのい ともふさ)に問い返した。

「うむ、小倉(同じ豊前国内)の毛利勝信の御好意に甘え、そちらへ仮寓することとなった」
「毛利様・・・父(秋月種実)が降伏した折も仲介の労を取って下さりました。実直な方だ・・・と父も申しておりました。」

毛利(中国の毛利家とは別)と聞いて竜子も少し安堵したが、その先はどうなるのだろうという不安が過った・・・。


1587年5月に島津家が降伏して九州征伐は終わった
そして同年の6月13日に国分けが発表されたのだが・・・・速攻で揉めた(_´Д`)アイーン ☆

本領を安堵された大まかな大名リスト↓
豊後・大友~秀吉に助けを求めた事が、九州征伐の発端となったので保護されて本領安堵(* ̄・ ̄*)Vブイ
肥前・竜造寺&鍋島~鍋島直茂が九州征伐の前から秀吉に接触し好意を得ることに成功したため本領安堵(* ̄・ ̄*)Vブイ
薩摩と大隅・島津~~戦って敗れたものの、その後降伏・恭順したのと、九州征伐を早く終わらせたい秀吉の思惑が合致して日向は召し上げとなったが薩摩・大隅の本貫地は安堵

それ以外の豊前・筑前・筑後・日向・肥後は全て総入れ替え~~~ ガ━━━(゚ロ゚;)━━ン!!
いわゆる織豊系の大名たちに分配されて、在来の国人たちには寸土の領地も残されてはいなかった。

「関白に謀られたのやもしれぬ・・・島津討伐の軍役を果たしたのに沙汰が無いとは、あまりに無体!」
朝房は悔しさを滲ませて恨み言を口にした。

竜子は、躊躇いつつも
「ですが・・・義父上様(朝房の父で城井家当主の鎮房(しげふさ)のこと)が出陣されておられないので・・・関白殿下は城井の心底を疑っておられるのでは・・・」

新妻の言葉を聞くと朝房も気まずそうな表情になった。
確かに従軍したのは嫡男の朝房だけで、当主の鎮房は「病でござる」と称して城井谷を出なかったのだ。

「中途半端は身を滅ぼす・・・と言いたいのであろうが、父の願いは城井に往時の勢いを取り戻すことなのだ。
誇り高い父が成り上がりの関白に頭を下げる気持ちになれないのは解ってやってくれ」

「それは・・・もちろん。」
竜子は神妙に頷いたのだが、城井の往時というのは実は鎌倉時代のことだった。

現代の我々が「ドラゴンボール」や「ワンピース」を知ってるように、
戦国時代の人間にとって、源平の御世は絵物語に出てくるヒーローでありアイドルでもある。(江戸期も人気は継続)
その伝説の時代に城井家は豊前の守護職だったのだ、その頃に戻したいというのは途方もない夢物語に聞こえてしまう。

(これが嫡流と庶流の違いかもしれない)と竜子は心中思った。

嫡流とは、嫡子(長男または正室の子)が跡目を継いで行くことで、次男以下は何処までも庶流・傍流と呼ばれる。
本来なら、それが正しい流れなのだが戦国時代になって様相が変わる。

下克上の世となると、兄弟・一族で家督争いが起きるようになり、実力で当主になるものが出てくるからだ。
また戦場で当主や嫡男が戦死したために、次男以下が家督を継ぐ・・・という事態が多数発生した。

竜子の実家・秋月家も大友軍との戦で祖父・文種が自害し、嫡男で竜子から見れば叔父にあたる晴種が戦死したために嫡流が途絶えた。
城も領地も全て失った秋月家を再興したのは、次男で竜子の父・種実だ。
秋月家は種実の代から傍流が家督を継いだことになる。


尤も、傍流も嫡流も「スタートに誰を置く」かで変わってくる^^;
城井家は関東の宇都宮家から分かれた「宇都宮の分家」なのだが、
在来地となった豊前の地であれば城井家が頂点であり嫡流となる。
城井谷の領民にとっても「おらが殿様は城井の殿様^-^」それ以外は考えられないというほど懐いている状態だ。

(嫡流の誇りがある上に、家が滅ぶ苦渋を知らない城井家には、秋月のように「生き残ることのみ考える」というのは無理かもしれない・・・)

さらに竜子が嫁いで驚いたのは、城井家と本家の宇都宮家の繋がりの深さだった。
関東と九州と離れているにも関わらず、互いの消息をやりとりしているし、
数代前には宇都宮の当主を豊前・城井家から迎えたことさえある。
舅の城井鎮房は関東・宇都宮家が次第に衰微していくのを、隣の家が火事になったかのように日々、案じていた。

そのような城井家だからこそ、まだ婚約中の竜子の実家を思い「降伏した秋月の助命嘆願」を関白に願い出てくれたのだ。
竜子は、そのことに心から感謝して「城井家の嫁」に徹すべく努めて来た。
そんな妻の健気さを夫の朝房も愛しく思い二人は仲睦まじく、朝房は側室を置かず竜子を大切にしていた。

(城井谷の領地さえ安堵してくれれば、城井は関白に忠義を尽くすに違いない・・・殿下が城井の誠実さを考慮に入れてくれないものか・・・)

このままワシに従えば良いが、逆らうなら討伐せねばならぬ
秋月から城井へ嫁ぐ許しを得る為に対面した折の、関白の厳しい言葉が竜子の脳裏を過る・・・

(交渉の余地は残されているのであろうか・・・関白殿下の古参家臣であられた毛利勝信様を通じて・・・)

黙り込む妻の様子を見て朝房が声をかけた。
「竜子・・・嫁いで、まだ程ないというのに、すぐに転居せねばならぬ・・・そなたには、すまぬと思うが辛抱してくれ」
「辛抱だなんて・・・小倉は弟の元種が若年のころ住んでいたことがございます。縁がある土地ですもの・・・だから、きっと大丈夫ですわ^-^ニコ」
朝房は「また竜子の「訳もなく大丈夫」が出たな」と言ったが、その声には妻の言葉にホッとした明るさがあった。

「国替えで日向に入国した父が申しておりましたわ。「秋月の空の蒼さは、この世の何処よりも美しい」と」
竜子が懐かしそうに言うと朝房も「ほう、城井谷も負けてはおらぬぞ、竜子はどちらが良いと思う?」
と揶揄するように訊ねた。

「わたくしは殿と共に住むところなら、どこでも天下一でございますので、一つに絞れませぬ」
新婚の夫妻は束の間・・・他愛のない会話を交わした。

竜子よ・・・そなたは嵐の真っただ中に飛び込む勇気があるか?
竜子は再び関白の言葉を思い起こした。

(あの時、わたくしは「何もせずに諦めたりはしない」「自分は秋月種実の娘だ」と御返事したのだ・・・)
(小倉での首尾がどうなるか、アレコレ考えても仕方ない、わずかな希みがあるなら何処へなりと行くまでだ)

嵐は確実にやってくる・・・運命の時計が時を刻み始めたのだが、それは・またの話 by^-^sio

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