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日新公伊呂波歌


後に薩摩藩の郷中教育の元となった、島津中興の祖・日新斎公の有り難い歌(-人-)☆彡




◎「い」:いにしへの 道を聞きても唱へても 我が行ひに せずばかひなし
(昔の偉い人の教えを幾ら聞いても口で唱えても、行動に起こさないと意味がない)

◎「ろ」:楼の上も はにふの小屋も住む人の 心にころは たかきいやしき
(立派な家に住んでいても、みすぼらしい家に住んでいても、人間の尊さや卑しさとは関係がない。
 心掛けが立派であればその人は尊敬されるのである)

◎「は」:はかなくも 明日の命を頼むかな 今日も今日もと 学びをばせで
(今日できることを明日に延ばし、更に後日に延ばし、明日を頼みとすると結局は何もできない。
 今日できることは今日すべきである)

◎「に」:似たるこそ 友としよけれ交わらば われにます人 おとなしき人
(自分と同程度の人と友達になろうとするものだが、なるべくなら自分より才能や学問に優れた徳の高い人を選んだ方がよい)

◎「ほ」:仏神 他にましまさず人よりも こころに恥ぢよ 天地よく知る
(人の心には神仏が住んでいるものであるから、良心に恥じ入ることなく正しい行いをしなさい。誰も見ていないようであるが、天地は必ず見ている)

◎「へ」:下手ぞとて 我とゆるすな稽古だに つもらばちりも 山とことの葉
(幾ら下手でも稽古を疎かにしてはいけない。毎日積み重ねれば必ず上達する)

◎「と」:科ありて 人を斬るとも軽くすな いかす刀も ただ一つなり
(罪人であっても軽々しく処罰してはいけない。
 殺すことも生かすことも君主の旨ひとつであれば、機微を洞察して臨機応変に処すべし)

◎「ち」:知恵能は 身につきぬれど荷にならず 人はおもんじ はづるものなり
(知恵や能力は幾ら身につけても決して邪魔にならない。
 人は沢山の能力を身に着けた人を尊び、自分の無知を恥じるものだから、たゆまず身につけなさい)

◎「り」:理も法も 立たぬ世ぞとてひきやすき こころの駒の 行くにまかすな
(乱れた世であっても身勝手な振る舞いに走ってはならない。
 世間がどうであれ、自分自身は正義人道に則り流されるべきではない)

◎「ぬ」:ぬす人は 余所より入ると思ふかや 耳目の門に 戸ざしよくせよ
(盗人は余所から侵入すると思いがちであるが、真の盗人は耳や目から入ってくる。
 心の戸締りをしっかりすることが肝要である)

◎「る」:流通すと 貴人や君が物語り はじめて聞ける 顔もちぞよき
(既に熟知していることでも、目上の人からの話は初めて聞くような振る舞いをした方がよい。
 知っているからと横着な態度を顔に表してはいけない)

◎「を」小車の わが悪業にひかれてや つとむる道を うしと見るらん
(人は欲望に引かれてしまうものである。
 そして何ともなかった筈の仕事すら辛く感じ、遂には悪行に走ってしまう。
 自分の成すべきを聢と成すべきである)

◎「わ」:私を捨てて 君にしむかはねば うらみも起り 述懐もあり
(君主に仕えるには私心を捨てるべきである。私心があるからこそ恨みや不平不満が生じるのである)

◎「か」:学問は あしたの潮のひるまにも なみのよるこそ なほ静かなれ
(学問をする上で時を選ぶ必要はないが、できるなら夜の方が静かなので適している)

◎「よ」:善きあしき 人の上にて身を磨け 友はかがみと なるものぞがし
(人様の善いことは見習い、悪しきことは自分はやるまいと諌め、自分自身を磨きなさい。
 友達の行いは反面教師となるので、自らの手本としなさい)

◎「た」:種子となる 心の水にまかせずば 道より外に 名も流れまじ
(煩悩の種に支配されずに行いをすれば、道に外れることもなく名聞も道より流れ出はしないだろう)

◎「れ」:礼するは 人にするかは人をまた さぐるは人を 下ぐるものかな
(人に礼を尽くすことは己に礼を尽くすに等しい。
 また、人を卑下することは己を卑下することに異ならない)

◎「そ」:そしるにも 二つあるべし大方は 主人のために なるものと知れ
(臣が主人を謗るのには二通りある。
 大概は主人の為になるものと、主人は心得るべきである)

◎「つ」:つらしとて 恨みかへすな我れ人に 報ひ報ひて はてしなき世ぞ
(人から辛い目にあわされても、恨みを返してはいけない。
 仕返しをなせば報いに報いを重ねる果てしない世となる)

◎「ね」:ねがはずば 隔てもあらじいつはりの 世にまことある 伊勢の神垣
(伊勢の神様は、此方が無謀な望みを起こさなければお守り下さる。
 非望を起こすから隔ても生じるのである)

◎「な」:名を今に 残しおきける人も人 こころもこころ 何かおとらん
(後世に名を遺した人も、人であることに変わりなく、心とて心であることに違いはない。
 同様の心を以てすればその地位に至ることも可能であり、決して劣るものではない)

◎「ら」:楽も苦も 時過ぎぬれば跡もなし 世に残る名を ただ思ふべし
(苦楽はそのとき限りのもので、時が過ぎれば跡形もなくなる。
 だが名前は、身を粉にして世に尽くせば残る。それを心掛けるべし)

◎「む」:昔より 道ならずして驕る身の 天のせめにし あはざるはなし
(古来より、無道をした者が天の責めに遭わぬということはないと知るべし)

◎「う」:憂かりける 今の世こそは先の世と おもへばいまぞ 後の世ならん
(現世の辛いことは前世の因果の為であると思えば、今の世を正しく生きれば来世は良い人生となるだろう)

◎「ゐ」:亥に臥して 寅には起くと夕露の 身を徒に あらせじがため
(夜は十時に寝て、四時に起きなさい。露のように儚い人生を無駄としないために)

◎「の」:遁るまじ 所をかねて思ひきれ 時に至りて 涼しかるべし
(逃れ難いときには、命を捨てる覚悟で思い切って決断すべきである。
 その覚悟があれば、まさかの時に至って涼やかでいられるものである)

◎「お」:思ほへず 違ふものなり身の上の 欲をはなれて 義をまもれひと
(正義の人であっても、ひとたび私欲の念が生じれば知らず道を外れてしまうものである。
 欲を捨てて正義を守るのが肝要である)

◎「く」:苦しくと すぐ道を行け九曲折の 末は鞍馬の さかさまの世ぞ
(どんなに苦しくとも、まっすぐ道を進みなさい。
 九十九折の様に曲がった道を行けば、末は真っ暗闇で逆さまに引っくり返ってしまうぞ)

◎「や」:やはらぐと 怒るをいはば弓と筆 鳥に二つの つばさとを知れ
(寛大に過ぎれば侮られ、厳格に過ぎれば陰口を叩かれる。
 寛大と厳格、この二つを例えるならば文と武である。鳥に翼が二つ必要なように、一方だけでは用をなさ ないと知りなさい)

◎「ま」:萬能も 一心とあり事ふる(つかうる)に 身ばし頼むな 思案堪忍
(いかに万能であっても、心が邪であれば取るに足らないものである。
 才能を頼みと要らぬ自慢などせず、よく思案し慎重に仕えたほうがよい)

◎「け」:賢不肖 用い捨つるといふ人も 必ずならば 殊勝なるべし
(賢者を用いて、そうでない人を用いないと言ったとしても、その通りにできるならば本当に感心である。 部下が真に優れているか否か、見極めるなどは難しいものである)

◎「ふ」:不勢とて 敵を侮ることなかれ 多勢を見ても 恐るべからず
(小勢だからといって敵を侮ってはいけない。
 また、敵が多勢だからといって恐れる必要はない)

◎「こ」:心こそ 軍さ(いくさ)する身の命なれ そろゆれば生き 揃はねば死す
(皆の心が一致団結すれば軍勢は勝利する。
 しなければ敗北する。)

◎「え」:回向(えこう)には 我と人とを隔つなよ 看経(かんきん)はよし してもせずとも
(供養する際は、敵味方を区別せず冥福を祈りなさい。
 但し、読経はしてもしなくてもよい)

◎「て」:敵となる 人こそはわが師匠ぞと 思ひかへして 身をも嗜め
(敵とは忌むべき存在のようだが、考えようによっては自分を嗜める師匠のようなものと思い返して、敵に 対しても苛酷残忍の取り扱いをしてはならない)

◎「あ」:あきらけき 目も呉竹の此世より 迷はばいかに 後のやみぢは
(目にも明らかな現世で迷えば、暗がりの死後の世界は一層迷うことだろう。
 目先のことに捕らわれず邁進すべきである)

◎「さ」:酒も水 ながれも酒となるぞかし ただ情けあれ 君が言の葉
(酒も水のように思い、また河の流れも酒のように有難く受けるものである。
 そのように情け深くあれば、厳しい言葉でも部下の心には沁みるものである)

◎「き」:聞くことも 又見ることも心がら みな迷ひなり みなさとりなり
(聞くことも見ることも、受け手の心掛け一つで迷いとも悟りともなる。
 何事も謙虚に受け止めるべきである)

◎「ゆ」:弓を得て 失ふことも大将の こころ一つの 手をば離れず
(大将の心一つで、士気を上げることも衰えさせることもある。
 よく心を配るべきである)

◎「め」:めぐりては 我身にこそは事へ(つかえ)けれ 先祖のまつり 忠孝の道
(先祖をよく供養すれば、自分も子孫より供養されるものである。
 主君に忠をなせば臣下が忠をなし、父母に考をなせば我が子に考を尽くされるものである)

◎「み」:道にただ 身をば捨てんと思ひとれ かならず天の たすけあるべし
(道義を前に身を捨ててかかれば、必ずや天からの助けがある)

◎「し」:舌だにも 歯のこはきをば知るものを 人は心の なからましやは
(舌でさえ歯が固いのを知っている。況して人には心がある。
 人様には虚飾を排して接し、また他人の正邪を察して、互いに害さぬよう心掛けるべきである)

◎「ゑ」:酔へる世を さましもやらで盃に 無明の酒を かさぬるはうし
(辛い世の中だからと、酒浸りになっても虚しいだけである。
 このようなときこそ、己を見つめ返すときである)

◎「ひ」:ひとり身を あはれと思へ物毎に 民にはゆるす 心あるべし
(頼る者のない身は寂しいものである。だから民には仁徳を以て寛大であるべし。)

◎「も」:もろもろの 国や所の政道は 人にまづよく 教へならはせ
(色々な国や所の法令は、民によく教えておかなければならない。
 それを知らない民を、これが国法であるからと刑罰に処するのは仁徳に欠く行為である)

◎「せ」:善に移り あやまれるをば改めよ 義不義は生れ つかぬものなり
(義も不義も天性のものではない。教え諭せば善人になりうるものである)

◎「す」:少しきを 足れりとも知れ満ちぬれば 月もほどなく 十六夜のそら
(欲をかかず、分を弁え程々にせよ。
 月も十五夜のように満ちてしまえば、翌日には十六夜となり欠け始めるではないか)

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